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‘TRIPS協定 (定ト)’ の逐条表示


65条 経過措置

(1)(2),(3)及び(4)の規定に従うことを条件として,加盟国は,世界貿易機関協定の効力発生の日の後1年の期間が満了する前にこの協定を適用する義務を負わない。
(2)開発途上加盟国は,(1)に定めるところによりこの協定を適用する日から更に4年の期間,この協定(3条,4条及び5条の規定を除く。)の適用を延期することができる。
(3)中央計画経済から市場自由企業経済への移行過程にある加盟国であって,知的所有権制度の構造的な改革を行い,かつ,知的所有権法令の準備及び実施において特別な問題に直面しているものも,(2)に規定する延期の期間を享受することができる。
(4)開発途上加盟国は,(2)に規定するこの協定の当該開発途上加盟国への一般的な適用の日において,この協定により物質特許の保護をその領域内で物質特許によって保護していない技術分野に拡大する義務を負う場合には,第2部第5節の物質特許に関する規定の当該技術分野への適用を更に5年の期間延期することができる。
(5)(1),(2),(3)又は(4)に規定する経過期間を援用する加盟国は,当該経過期間の間の国内法令及び慣行の変更がこの協定との適合性の程度を少なくすることとはならないことを確保する。… 全文





66条 後発開発途上加盟国

(1)後発開発途上加盟国は,その特別のニーズ及び要求,経済上,財政上及び行政上の制約並びに存立可能な技術的基礎を創設するための柔軟性に関する必要にかんがみ,65条(1)に定めるところによりこの協定を適用する日から10年の期間,この協定(3条,4条及び5条の規定を除く。)を適用することを要求されない。貿易関連知的所有権理事会は,後発開発途上加盟国の正当な理由のある要請に基づいて,この期間延長することを認める。
(2)先進加盟国は,後発開発途上加盟国が健全かつ存立可能な技術的基礎を創設することができるように技術の移転を促進し及び奨励するため,先進加盟国の領域内の企業及び機関に奨励措置を提供する。… 全文





67条 技術協力

この協定の実施を促進するため,先進加盟国は,開発途上加盟国及び後発開発途上加盟国のために,要請に応じ,かつ,相互に合意した条件により,技術協力及び資金協力を提供する。その協力には,知的所有権の保護及び行使並びにその濫用の防止に関する法令の準備についての支援並びにこれらの事項に関連する国内の事務所及び機関の設立又は強化についての支援(人材の養成を含む。)を含む。… 全文





68条 知的所有権の貿易関連の側面に関する理事会

貿易関連知的所有権理事会は,この協定の実施,特に,加盟国のこの協定に基づく義務の遵守を監視し,及び加盟国に対し,知的所有権の貿易関連の側面に関する事項について協議の機会を与える。同理事会は,加盟国により与えられる他の任務を遂行し,特に,紛争解決手続において加盟国が要請する支援を提供する。その任務を遂行するに当たって,同理事会は,適当と認める者と協議し,情報の提供を求めることができる。WIPOと協議の上,同理事会は,その1回目の会合から1年以内に,WIPOの内部機関と協力するための適当な取決めを作成するよう努める。… 全文





69条 国際協力

加盟国は,知的所有権を侵害する物品の国際貿易を排除するため,相互に協力することを合意する。このため,加盟国は,国内行政機関に連絡先を設け,これを通報し,及び侵害物品の貿易に関して情報を交換することができるように準備する。加盟国は,特に,不正商標商品及び著作権侵害物品の貿易に関して,税関当局間で情報の交換及び協力を促進する。… 全文





57条 点検及び情報に関する権利

秘密の情報の保護を害することなく,加盟国は,権限のある当局に対し,権利者が自己の主張を裏付けるために税関当局により留置された物品を点検するための十分な機会を与える権限を付与する。当該権限のある当局は,輸入者に対しても当該物品の点検のための同等の機会を与える権限を有する。本案についての肯定的な決定が行われた場合には,加盟国は,権限のある当局に対し,当該物品の荷送人,輸入者及び荷受人の名称及び住所並びに当該物品の数量を権利者に通報する権限を付与することができる。… 全文





58条 職権による行為

加盟国において,権限のある当局が,ある物品について知的所有権が侵害されていることを伺わせる証拠を得た際に職権により行動して当該物品の解放を停止する制度がある場合には,

(a) 当該権限のある当局は,いつでも権限の行使に資することのある情報の提供を権利者に求めることができる。
(b) 輸入者及び権利者は,速やかにその停止の通知を受ける。輸入者が権限のある当局に対し当該停止に関して異議を申し立てた場合には,当該停止については,55条に定める条件を準用する。
(c) 加盟国は,措置が誠実にとられ又はとることが意図された場合に限り,公の機関及び公務員の双方の適当な救済措置に対する責任を免除する。… 全文





59条 救済措置

権利者の他の請求権を害することなく及び司法当局による審査を求める被申立人の権利に服することを条件として,権限のある当局は,46条に規定する原則に従って侵害物品の廃棄又は処分を命じる権限を有する。不正商標商品については,例外的な場合を除くほか,当該権限のある当局は,変更のない状態で侵害商品の積戻しを許容し又は異なる税関手続に委ねてはならない。… 全文





50条

(1)司法当局は,次のことを目的として迅速かつ効果的な暫定措置をとることを命じる権限を有する。
(a) 知的所有権の侵害の発生を防止すること。特に,物品が管轄内の流通経路へ流入することを防止すること(輸入物品が管轄内の流通経路へ流入することを通関後直ちに防止することを含む。)
(b) 申し立てられた侵害に関連する証拠を保全すること
(2)司法当局は,適当な場合には,特に,遅延により権利者に回復できない損害が生じるおそれがある場合又は証拠が破棄される明らかな危険がある場合には,他方の当事者に意見を述べる機会を与えることなく,暫定措置をとる権限を有する。
(3)司法当局は,申立人が権利者であり,かつ,その権利が侵害されていること又は侵害の生じる差し迫ったおそれがあることを十分な確実性をもって自ら確認するため,申立人に対し合理的に入手可能な証拠を提出するよう要求し,並びに被申立人を保護し及び濫用を防止するため,申立人に対し十分な担保又は同等の保証を提供することを命じる権限を有する。
(4)暫定措置が他方の当事者が意見を述べる機会を与えられることなくとられた場合には,影響を受ける当事者は,最も遅い場合においても,当該暫定措置の実施後遅滞なく通知を受ける。暫定措置の通知後合理的な期間内に,当該暫定措置を変更するか若しくは取り消すか又は確認するかの決定について,被申立人申立てに基づき意見を述べる機会の与えられる審査を行う。
(5)暫定措置を実施する機関は,申立人に対し,関連物品の特定に必要な情報を提供するよう要求することができる。
(6)(1)及び(2)の規定に基づいてとられる暫定措置は,本案についての決定に至る手続が,合理的な期間(国内法令によって許容されるときは,暫定措置を命じた司法当局によって決定されるもの。その決定がないときは,20執務日又は31日のうちいずれか長い期間を超えないもの)全文





(注)

加盟国は,関税同盟を構成する他の加盟国との国境を越える物品の移動に関するすべての管理を実質的に廃止している場合には,その国境においてこの節の規定を適用することを要求されない。

51条 税関当局による物品の解放の停止

加盟国は,この節の規定に従い,不正商標商品又は著作権侵害物品(注1)が輸入されるおそれがあると疑うに足りる正当な理由を有する権利者が,これらの物品の自由な流通への解放を税関当局が停止するよう,行政上又は司法上の権限のある当局に対し書面により申立てを提出することができる手続(注2)を採用する。加盟国は,この節の要件を満たす場合には,知的所有権のその他の侵害を伴う物品に関してこのような申立てを可能とすることができる。加盟国は,自国の領域から輸出されようとしている侵害物品の税関当局による解放の停止についても同様の手続を定めることができる。

(注1)

この協定の適用上,

(a) 「不正商標商品」とは,ある商品について有効に登録されている商標と同一であり又はその基本的側面において当該商標と識別できない商標を許諾なしに付した,当該商品と同一の商品(包装を含む。)であって,輸入国の法令上,商標権者の権利を侵害するものをいう。
(b) 「著作権侵害物品」とは,ある国において,権利者又は権利者から正当に許諾を受けた者の承諾を得ないである物品から直接又は間接に作成された複製物であって,当該物品の複製物の作成が,輸入国において行われたとしたならば,当該輸入国の法令上,著作権又は関連する権利の侵害となったであろうものをいう。

(注2)
権利者によって若しくはその承諾を得て他の国の市場に提供された物品の輸入又は通過中の物品については,この手続を適用する義務は生じないと了解する。… 全文